堅物社長にグイグイ迫られてます
「お前の言ってることがよく分からないが、とりあえず場所を変えるぞ。これ持ってちょっと待ってろ」

御子柴さんはそう言うと私からするりと離れて、持っていた傘を私の手に持たせる。

そして歩道に面している道路へ向かって歩いていくと、ちょうど通りすぎたタクシーを止めてから再び私のもとへ戻ってきた。

「歩けるか」

御子柴さんに支えられながらタクシーに乗り込むと、冷たい外の空気が一転して車内のもわっとした暖かな空気に包まれた。

後部座席に座ったと同時に運転手さんから「どちらまで」と声を掛けられる。

御子柴さんがどこかの住所を告げると「わかりました」と運転手さんはハンドルを握り、タクシーは雨に濡れる都会の街をゆっくりと走り始めた。

雨に打たれたからなのか、泣いたせいなのか、揺れる車内で私はだんだんと瞼が重たくなっていく。

あ、もうダメだ――― 

そこで私の意識はプツンと切れた。


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