堅物社長にグイグイ迫られてます
今日はどんな下着を付けていたっけ。

上着の襟元から中を覗き込むとピンクの花柄。私は思わず胸の前で手をクロスさせながら、ベッドに座る御子柴さんを見上げる。

「み、み、見ましたよね?」

「ああ」 

即答だ。しかも恥ずかしくて動揺している私とは違って御子柴さんは表情ひとつ変えずに冷静で。

「安心しろ。ただ服を着替えさせただけでお前の下着姿になにも感じてない。それにもう忘れた」

「そ、そうですか」

どうやら御子柴さんにとって私の下着姿はそれほど記憶に残らないものだったらしい。ホッとしたような、女性として空しい気もするような複雑な気持ちだ。

「でもせめて上下ぐらいは揃えたらどうだ。上はピンクの花柄で下が青のボーダーって色も柄も違いすぎだろ。男がその気になって脱がせてそれじゃあさすがに萎えるぞ」

「……」

ちょっと!さっきは忘れたって言ったくせに私の下着の色や柄までしっかり覚えてるじゃん!

しかも上下を揃えろだなんて、そんなアドバイス御子柴さんにされたくない。

恥ずかしくて今すぐにでもこの部屋から飛び出していきたいけれど。

そっか……。私には帰る家がないんだった。
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