堅物社長にグイグイ迫られてます
「それで、昨日はなにがあったんだ」

御子柴さんがいつもよりも更に低い声でそう尋ねてきたので、私は視線を下に落とすと下唇をきゅっと噛みしめた。

同棲中の彼氏に浮気をされて何も持たずに自宅を飛び出してきました――なんて惨めなプライベートはできれば御子柴さんには打ち明けたくない。

「言いたくないです」

小さな声でそう答えたけれど、

「言え」

御子柴さんは納得してくれない。

「俺に散々迷惑かけたんだ。昨夜、何があったのかきちんと話せ」

御子柴さんは腕組みをしながらじっと私を見降ろす。

たしかに昨夜は号泣しながら御子紫さんに抱き着いてしまったし、今もこうして自宅にお世話になっている。ご丁寧に雨で濡れた服まで着替えさせてもらったし。

御子柴さんの言う通り、この状況で昨夜私に何があったのかを御子柴さんに話さないわけにはいかないと思う。
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