堅物社長にグイグイ迫られてます
けれど、そもそもはミスをしてしまう私が悪いのだから仕方がない。どうしてこう毎回毎回懲りずにミスばかりを繰り返してしまうのだろう、と自分で自分のことが情けなくなる。

振り返れば幼稚園の頃から、みんながスムーズにこなせるようなことが私にはとても難しかった。何をやるにもスローペースでミスが多い。友達からは『雛子ちゃんって天然だよね』なんて言われてよく笑われていたし、どんくさい性格の私はクラスメートの女子から仲間外れにされたこともあった。

もうすっかり大人になったというのに私はあの頃から何も変わっていない。

仕事は遅いし、よく間違えるし、要領も悪いし、ドジもするし、背も低いし、天然パーマだし……という後半二つのコンプレックスは今は関係ないけれど。

たった一つの仕事のミスをきっかけに次々と自分の嫌いな部分が気になりため息をこぼした、そのときだった。


「ただいま」


男性の低い声と共に事務所の扉がガチャリと音をたてて開いた。反射的に肩がビクッと震える。

外出中だった御子柴さんが戻ってきたようだ。
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