堅物社長にグイグイ迫られてます
そのままじっと見つめていると、そんな私の視線に気が付いたらしい御子柴さんがちらっと私に視線を向ける。

「なに?」

そう不機嫌な声で聞かれてしまい、

「い、いえ。なんでもないです」

私は慌てて視線をそらした。

それから少しして御子柴さんの手作り朝食が完成した。

「できたぞ」

御子柴さんがダイニングテーブルの上にそっと置いたお皿にはふっくらとした卵焼きが乗っている。

他にも茶碗にたっぷりともられた白米と、小松菜とわかめの入ったみそ汁が運ばれてくる。それにすでにテーブルに並んでいる焼き鮭ときゃべつのおかか和えが加わり、朝から旅館並みに豪華な朝食だ。

「よし。食べるか」

御子柴さんが私の向かいの席に腰を降ろすと、私たちは揃って朝食をとり始めた。

「いただきます」

まずはお味噌汁をすする。瞬間、体の内側からポッと温まっていく。

「おいしい」

昨日のオムライスと同様、優しくてホッとする味だ。シンプルだけどだしがよくきいていて、子供の頃におばぁちゃん家で食べたみそ汁を思い出す。
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