堅物社長にグイグイ迫られてます
「ねぇ雛子。御子柴さんの実家ってあの御子柴商事って言ってたよね」

「うん」

答えながらサクサクのタルト生地にナイフを入れる。フォークにさして口へ運ぼうとしたところで汐里がポツリと呟く。

「もしかしてそれって玉の輿にのるチャンスなんじゃない?」

「玉の輿?」

「そう!これをきっかけに御子柴さんの彼女になって、そして結婚なんてことになればゆくゆくは大企業の社長夫人!雛子、それが玉の輿よ!俊太のバカのことなんて忘れて御子柴さんに乗り換えなさい」

「乗り換えって……」

汐里の言葉を聞きながら私は口に入れたタルトをさくさくと噛んでから飲み込んだ。

「あのさ、汐里。前から言ってると思うけど私は御子柴さんのこと恋愛的な面では見てないからね」

「なんで?」

「なんでって言われても……」
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