堅物社長にグイグイ迫られてます
御子柴さんがまだ出勤していないことに疑問を感じつつ自分のデスクに着くと向かい側の席に座る佐原さんに声を掛けられた。

「雛子ちゃん、今日はどうしたの?」

どうしたの、とはたぶん私がいつもよりも早く出勤したことを聞いているのだと思う。

「今日から歩いて来ることにしたんです。きっと迷うと思って早めに家を出たら早く着きすぎました」

「え!?歩いてきたの?雛子ちゃんの家からここまでだとかなりの距離あるよね」

佐原さんとは普段からわりとよくお互いのプライベートなことを話したりするので、私が彼氏である俊君と同棲していることも、アパートの場所も話したことがあるので知っている。

「それが、彼氏と別れて同棲も解消したんです」

「え!?そうなの?」

俊君とのことを打ち明けると、佐原さんは目を丸くして驚いている。

けれどその反応は当たり前かもしれない。

佐原さんと最後に会った金曜日には【彼氏一筋】と言っていたはずの私が、次に会ったときにはその彼氏と別れたと打ち明けたのだから。
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