『ドリームワンダーランド』へようこそ!
「歩美起きて!歩美!」
誰かに肩を揺さぶられている。
まだ眠たいのに、強引に起こされて目を覚ました。
目の前にいたのは、親友の吉本ひなただった。
「あれ?ひなた・・・・?」
「ハァ。やっと起きた~。」
「ここは・・・・・・?え?なんでバスの中にいるの?」
「分かんない。ウチも起きたらここにいたの。他の人も皆降りてるから。行こ。」
「え?他の人って?」
先にバスを降りようとするひなた。
「ちょっと待ってよ!」
バスから降りると、同じクラスの6人がいた。
気が強い性格の上田麗華。
いつも麗華のご機嫌取りをしている香織。
男子に媚ばっか売ってる愛七(あいな)。
不良グループに所属していて言葉遣いが荒い鬼塚竜斗(おにづかりゅうと)。
成績優秀で委員長をしている水沢環(みずさわたまき)。
サッカー部の部長でエースの杉野優馬(すぎのゆうま)。
みんな、私と同じグループの子達だった。
「あ~!やっと来たー。」
飽きれた口調で言う麗華。
「みんな!何で!?」
「分かんない。アタシらも気づいたらバスで寝てたの。」
「そうそう。てか、スマホもないし。連絡出来ないじゃん!」
「ねぇ、ここどこなの?」
すると、麗華が肩をすくめて上を指差した。
「ドリームワンダーランド。ほら、あそこに書いてあるでしょ?」
「あ、ホントだ・・・・・・。」
そこには、大きな入り口ゲートがあり、看板にはデカデカとした字で「ドリームワンダーランド」と書かれていた。
ドリームワンダーランドは、地域活性化のために造られた遊園地。開業当時は、多くの人々が訪れて有名になったけど、赤字と事故が立て続けに起こって12年前に閉園した。
(私も小さい頃来たけど、あんまり覚えてないんだよな~)
その時、電気が一斉に付き、アナウンスがパーク内に響き渡った。
『由比ヶ浜高校2年D組の皆さん。こんばんは~!ドリームワンダーランドにお越しくださり、ありがとうございます。今回は、アトラクション無料デーと1000万円の賞金が貰えるゲーム大会を実施しておりますので、ぜひご参加くださーい!』
アナウンスが終わると、リズミカルな軽快な音楽が鳴った。
「はぁ?何?今の。」
「分かんない。」
麗華と香織が、ヒソヒソと話す。
「それより聞いたか?1000万貰えるって!!」
目をキラキラさせる竜斗。
やはり、お金には興味があるのだろうか。
「あぁ、聞いた。」
竜斗とは対称的に落ち着いた態度で言う杉野君。
声に反応して胸がドキドキするのを感じた。
「よーし!だったら行こうぜ!」
「待ってください!」
環が、竜斗に向かって声を上げた。
「あ?なんだよ。委員長!」
「やっぱりおかしいですよ。この遊園地。なんだか薄気味悪いし。」
「ねぇ、みんな帰ろうよ~。」
不安気な目をしているひなた。
「だったら残ればいいじゃん。行こ!みんな。」
(あーあ。怒っちゃった。)
麗華がイライラした口調で言い放つと、私達を置いて先に行ってしまった。
それに続くように他の人も行ってしまう。
「待ってよ~!」
(しょうがない。行くか。)
私達は、仕方なく麗華達の元へ走っていた。