🍓夫の溺愛(大学教授の場合。)
離婚は、回避
「ウッ、どうして。」
係の人は
「お互い良く話し合って
くださいね。
大事な事ですからね。
奥さんはまだ決心が着いて無い
んじゃ無いですか? 」
と念を押すように、ムッとした顔で
一郎太を見て言った。
「申し訳ありません。」
一郎太は頭を深く下げた後
唖然として動けなくなった美奈を
よそに離婚届を取り上げてまるめ
一郎太の胸ポケットにしまった。
「行こう。」
美奈の腕を抱え上げ、
一心に泣き叫ぶ美奈を
抱きしめるようにその
場所を去った。
一郎太の背広の中に
スッポリと埋まった美奈は
シャツ越しに生暖かい一郎太の
優しい体温を感じていた。
市役所近くのカフェに入ると
熱いミルクを二つ頼んだ。
「兎に角落ち着こう。」
何がなにか一郎太はまだ理解
出来ていなかった。
「うん、
ごめんなさい。」
美奈はただ謝る事しかできなかった。
「何について誤ってんの?」
ミルクのカップを抱え一口飲んだ
一郎太が顔を傾けてきいた。
「結婚届けを勝手に出したこと、
一郎太の戸籍をよごしたこと。」
「あ、そうか
もしかして、あの婚姻届
だしたの?」
「うん。」
美奈はしょぼんとしていた。
しょぼんさが可哀想になった
一郎太は美奈に囁くような
優しい声で言った。
「それは謝らなくていい。
勿論二人で出したかったけどね。」
美奈はうなだれていた顔をあげた、
そのときポターツと涙が頬をなで
るように落ちた。
一郎太は指で美奈の涙を拭いて
ニッコリと笑いつつ、
何時もの優しい声で言った。
「僕達は夫婦・・・だから。」
沈黙を破ったのは彼の思いもしない
言葉だった。
「違う。私が勝手に夫婦にした。
あなたの意思は動いていない。
そんなの夫婦じゃないよ。
本当にごめんなさい。」
「美奈!」
彼の制裁するような声に
いたたまれず許しをこう。
「裁判して申し立てをして下さい。
でないと、あなたの妻となる方に
申し訳ありません。」
「書いたのは僕だよ。
本気で書いたし、君の謝る事
じゃない。愛してる。
もう何も言うな。な!! 」
「だ…って!まだ結婚しないって
言ってたじゃない。
だからお願い、私を訴えて下さい。
あなたの自由を取り戻して。」
「オレの自由?
美奈が自由になりたいんじゃ
ないか?」
「エー違うよ…。
一郎太といたい、離れたくない。
大好き、一郎太の子供だって
欲しいんだよ。5~6人
ほんとだよ。」
一郎太は顔を赤くして
恥ずかしそうに
そして凄く嬉しそうにしていた。
「じゃあ帰ろうか奥さん。」
その響きは不思議なものだった。
私奥さんなんだ。
「…うん。でもお見合いは?」
申し訳ない気持ちが先にたって
したたかに見上げる。
「だれかさんが、別れる、
別れる言うから
好きな子がいるからって断ったよ。
飛んで帰って良かった。
バス停にいる美奈を偶然見つけ
て車で付け て来たんだよ。
虫の知らせだな。」
「昨日から食べてないの
お腹空いた。」
グスン
「フフフ美奈らしくなったな!
なに食べたい。」
「一郎太のゴハン♡。」
グスン