🍓夫の溺愛(大学教授の場合。)
美奈は普段着のまま来たことを
謝った。
しかし彼の父親も、

「急な呼び出しをしたのは
私達だから
 気にせんでええ。
 来てくれて有り難う。」

「旦那様お料理は?」

藍色の着物を着てキチンと髪を結い
上げた30代くらいの若女将さんだ
ろうか?伺いをたてていた。」




「若女将、話があるから
後で呼ぶよ。
 すまないね!!
 料理長にはあやまっといてな!」



若女将さんは桜のような
微笑みを返して軽く美奈にも
頭を下げて出て
いかれた。


熱いお茶を進められ
クーラーの効いた少し肌寒い部屋
で頂く。

一口飲み干した後

「一郎太が世話になってるとか?」
 彼の父親が口火をきった。

     「はい、あ、いえ」

美奈も緊張して上手く話せない。
彼の父親もお茶を飲み
         ゴクッ


「この間見合いをしましてね。
 向こうのお嬢さんも一朗太を気
にいってましてな‼

 年齢も28だし一朗太とは丁度いい
んですよ。
 
もちろん私達も気に入りましてな!
 家柄も器量も、申し分ないんです
よ。」


       「はい?。」


彼の母親をみると、やはり冷たい
ような感じがした。
美奈はどうやら気に入られて
ないらしい。


「で、あなたはどうしたい?」

美奈は急な問いかけに驚いて


  「どうしたい?って?」


「嫌々!一朗太が結婚するでしょう。
 だからその後ですよ。
 別れてもらえますか?

 あなたは一朗太と一度婚姻関係に
 ありましたな。

 一朗太は、知らなかったみたい

ですが…
 勝手に偽造して出されたのか?

 こっちもでるとこにでてあの子の
 戸籍を綺麗にしなきゃ
ならんのです
よ。

 勿論裁判にします。
依存はありませんな‼」


「偽造ではありません。
 彼が書いて私に渡しました。
 ただ出すのは一緒にしようと
約束していましたが、私が出し
ました。」


隣にいた母親が

「そうなんですか?
 あなたが勝手に出したのでは
ないの?」

「勝手に出しましたけど
 偽造ではありません。
一朗太さんを
 呼んでください。」


 すると彼の母親が

「一朗太は今京香さんと
食事中なのよ。
 あっちの座敷にいるのよ。
 呼べないでしょ。」


「え、今日は大学で‥は?」


「あらあら、貴方には
邪魔されると
 思ったのかしらね?

 朝からずっとデートよ。
 お昼に私達と個々で落ち合う
約束なの
 向こうのご両親も見えるのよ。」


「え、そんな!! 一朗太さんは
 女の人と2人では会わないって
約束しました。
 彼のはずないです。」


槍問答でらちがあかない。
美奈も自分で確かめるまで
信じない。

だって一朗太は、約束破らない。
絶対、私を愛してくれてるもん。


元義父様と美奈は、じっと睨み合い
ゆずらない。


 「わかった。じゃあ私が
行くから
  確認しなさい。」

そう言うと宗一郎は座敷の方へと
歩いて行った。
開けられたふすまの真ん中の台
の上には2人分の食事と
向かい合って座る京香さんと
一朗太がいた。

「おそかったですね、父さん。」

  「おお、すまんすまん。」

「あれ?母さんは?」

  「すぐ来るだろ。どうだ、
   楽しかったかデートは?」

「当たり前でしょう。
 美人と一緒なんだから
ハハハ。」

それを聞いた美奈は…?
あきれてしまった。


「わかりました…。
 彼は諦めますってか‥あんな
嘘付きによくぞ育てましたね。

 ハハハハハハ、アーッハハハ」

美奈は何だか馬鹿馬鹿しくなり、
そんな奴を信頼した自分も、
馬鹿丸出しのようで
笑いがこみ上げ我慢できなかった。


「貴方何がおかしいの?」

厳しそうな元姑は、目を釣り上げ
一括した。

 「だってぇ、私何回も騙されて
きたのに
  また騙されたんですもの。」
クククククあーハハハハハ
馬鹿デスヨネー


「おじ様あちら随分賑やかですわね。」

一朗太も
「誰だよ!げひんだな!!」
と腰を上げた。

そんな一郎太の目に
襖の向こうには、一朗太が大事に
している美奈が大笑いしていた。





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