卒業します
「何処に行きたい?」

「……………………………えっ?」

あまりに想像と違い、思わず聞き返した。

「聞こえなかった?
……………………何処に行きたいかと聞いたんだけど。」

「何処って…………。」

「家に帰りたいなら、送って行くし
そうでないなら、違うところに送るよ。
高校生でしょ?
制服を着てるって事は…………帰りたくない事情があるのかな?って思って。
僕にも、大昔だけど覚えがあるからね!」と笑って

もう一度尋ねた。

この人、私が何処の誰だか知らないのかなぁ?

それなら、甘えて何処かに行こう。

今は帰って、良い子でいるのが辛いから。

「……………………あの……………
私、お家に帰りたくないんです。
でも…………お金も持って来てないし…………
行くところがないんです。」

「こらこら、君はお嬢様?
それともスッゴいおバカさん?
女の子がこんな時間に、男に向かって
『行くところがないんです。』なんて言ったら…………
大変な事になっちゃうよ。」

そうなんだぁ…………………………ふぅ~ん。

他人事のように聞いてたら

「分かった。
危なっかしいから、今日は家に連れて帰る。
もちろん、家族と一緒だから安心して。」…………………と。

濡れた私を乗せて、平然と自分の家に連れて帰ってくれた。
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