卒業します
コンコン。

不意に、お風呂場のドアをノックされる。

……………もしかして……………

お家の人が、入ろうとしてる?!

泣いていたせいで、嗚咽が止まらず声が出ない!

「ヒッ……………あの…!
ヒック、ヒック、ヒッ。」

子供のようにヒクヒク言ってたら…………

コンコン。

もう一度、ドアをノックされた。

「…………………………………もしかして………
また、泣いてる?」

心配そうな声で尋ねたのは…………

私をここまで連れてきてくれた彼だった。

「……………ヒッ、いい…………ヒック…………えっ。」

『いいえ』さえまともに話せないのに、つい誤魔化してしまう。

クスリと小さく笑うと声が、ドアの向こうから聞こえる。

「ムリしなくていいよ。
遅くて心配しただけだから。
ゆっくり泣いて、スッキリしたら出ておいで。」

大人な彼は、そう言うと

遠ざかって行った。



あれからどれくらい一人でお風呂に入っていたのだろう。

涙は彼の出現で引っ込んだものの

一人になると、誠ちゃんと過ごした日々が

走馬灯のように浮かんできた。

「しぇしゃん。」と

まだまともに話せない頃の事から、さっき見たキスシーンまで。
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