卒業します
お風呂からあがると、私が家で着ている下着や部屋着が置いてあった。

……………………………???

どうして?

不思議に思いながらも袖を通し

案内されるままにリビングに向かうと

先ほどの男性が、パソコンの手を止めて

「温まった?」と笑顔を見せる。

聞きたい事は沢山あるのに……………

その懐かしい笑顔に目を奪われた。

「あっ……………はい……………ありがとう………ございました。」

クスクス笑いながら

「こっちにおいで。」とソファーを勧めてくれる。

「お邪魔します。」

お風呂あがりということもあり、男の人の隣はとても緊張する。

「コーヒーで良い?」

立ち上がって先程の多岐さんに声をかけている。

程なくして現れた多岐さんに

「お嬢様は、夕ごはんがまだでしょう?
お口に合うか分かりませんが
食べれるようでしたら、どうぞ。」と

テーブルにコーヒーの他にサンドウィッチとフルーツが一緒に置かれた。

「あっ……すみません。
遅くにお邪魔したのに……………。」

「遠慮なさらずに召し上がって下さいね。」

ニコニコと優しい笑顔のまま退出された。

「せっかくだから、どうぞ。」

男性に勧められて一口食べると

美味しくて……………生きてるんだと実感させられる。

さっきまで、この世の終わりかと思っていたのに。

食べ進める私を、優しい眼差しで見つめている。

………………………ところで

この人は誰??

お風呂を借り、ご飯を頂き…………お泊まりまでさせて頂くのに

今さらだけど………………。
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