卒業します
教室に帰ってからも、春人さんの話題で持ちきりの今

親友二人からの風邪の追及なんてなかった。

助かったと思う反面、ナゼか薄情にも感じる。

保健室の前は、春人さん見たさに

沢山の人が行き交っている。

お嬢様だけあって、中に入る勇気と図々しさはないから

チラチラと気にしながら、廊下を行き交っているだけだけどね。

私がその廊下に佇んでいるのは

何も春人さんを見にきた訳ではない。

保健委員の玲奈に泣きつかれ

桜と二人、ついてくることになったのだ。

「玲ちゃん、遅いね。
保護者に配る、プリントを取りにきただけなのに~」

食後眠くなる桜は、とっても不機嫌だ。

しゃがみこみ、廊下で眠り始めた桜を気遣いながら隣に座ると

ガラリとドアが開いて

玲奈と春人さんが、顔を覗かせた。

「こっちのこけし頭が、1週間休んでいた子です。」

ちょっと玲奈、こけし頭じゃなくてボブカットだってばぁ!

いつも言い合いになる言葉を、心で吐いていると

「まだしんどい様子ですね。
午後は、保健室で休ませますから
担任の先生と教科担任の先生への連絡を、お願いします。
キミ、立てる?」

私の前にしゃがみこむと、顔を近づけて

有無を言わさぬ笑顔で話しかけて来る。

「あっ、…………………………はい。」

「ごめん、夏苗。
しんどいのに付き合わせて。」

玲奈の申し訳なさせそうな声に続いて

「夏苗ちゃん、大丈夫?
ノートは後で見せてあげるから、ゆっくり休んでね。」と

桜まで休むように勧めてきて、逃れることが許されない。

「…………………うん、よろしくね。」

渋々諦め、春人さんに支えられて保健室に入ることになった。
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