卒業します
現実

お兄ちゃん

「おはようございます!」

「元気になりましたね。」

「はい、春人先生のお陰です。
ありがとうございました。」

昨日誠ちゃんに『妹としか思えない』と言われて

失恋確定のはずなのに

前回よりもずっとスッキリしてるの。

「放課後、保健室にお邪魔してもいいですか?」

もう一度きちんとお礼が言いたいと思って尋ねたのに

「ごめんね、今日は午後から会議なんだ。
明後日はお休みでしょう?
多岐さんも心配してたから
家に来て元気な顔を見せてやってくれると嬉しいなぁ。」

確かにそうだよね。

春人先生はもちろん、多岐さんにも随分お世話になったもん。

ウチのお母さんも大好きな

伊勢屋の塩大福と大納言いっぱいの最中を買ってお邪魔しよう。

「では、明後日の午後から伺います。」

「今更そんなに畏まらなくてもいいよ。
誠次に色々聞いたでしょう?
俺が意地悪だって。」

「意地悪だなんて…………………そんな。
春人先生は、立派なお医者様だと思ってます。
失恋のキズも治してくれたんですから。
昨日がなければ………まだまだ引きずってたと思います。」

「それなら良かったよ。
だったら、就任して一番初めに治したキズが
夏苗ちゃんなんだね。」

「あっ、でも…………
誠ちゃんに片思いしてたことや失恋したことは
みんなには内緒でお願いします。
失恋して寝込んだなんて、恥ずかしいもん。」

「大丈夫だよ。
医者には、守秘義務があるからね。
絶対にしゃべらないよ。
例え、多岐さんの美味しいご飯の食べ過ぎで太ったとしてもね!」

「ヒドイ~
女の子に『太った』は、セクハラですよぅ!
第一、熱があったからそんなに食べ過ぎてないもん!!」

ふくれる私の頭を撫でて

「それくらい、色んな表情をして元気なら大丈夫だな。
じゃあ、そろそろ授業が始まるから行っておいで。
明後日の午後、美味しいケーキを用意して待ってるから。」って。

誠ちゃんじゃないけど……

もう一人のお兄ちゃんみたい。

学校に来る楽しみが、また一つ増えたかも。
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