卒業します
「ごめんって言ったのは………夏苗ちゃんを傷つけちゃったから。
君を守りたくてついたウソで………
君を傷つけた。
泣かせたく無かったのに、泣くことも出来なくさせてしまった。
…………………………………。
さっき聞いた通り、誠次は昨日婚約した。
相手は………………さっきの彼女。
彼女の名前は…………竹内璃子。
俺の従姉妹。」

「……………………竹内…………璃子………さん。
春人さんの従姉妹なんだ……………。」

「信じれないかも知れないけど………
二人が出会ったのは、偶然なんだ。
たまたま大学の授業で隣になったって聞いた。
俺が夏苗ちゃんにウソをついたのは…………旅行の事。
もう気づいてると思うけど………
チケットを貰ったって言うのは嘘です。
婚約の話を聞いて
もしも、婚約の時に君が鉢合わせしたら…………
無理に笑顔を作って………お祝いするだろうなと思うと
堪らなくなったんだ。」

「それって……………
可哀想って事?」

「………………………嫌、違う。
俺が………そんな傷つく君を見れないと……………。
一層、婚約までの間に…………二人が別れてしまえば良いのにって
毎日思ってたんだ。
誠次や璃子よりも…………
君が大切になったから。
だから………
見ないで済むなら………旅行にでも行ってしまおう!って。
まさか、今日まで一緒にいるとは考えて無かった。
結果的に、一番見せたくないものを見せて
笑って「おめでとう」を言わせてしまった。
…………………だから…………ごめん。」

旅行のからくりが、春人さんだって言うのは気づいた。

チケットを手配して、人を集めて…………

私を守ってくれてたんだろうとも、想像がついてた。

でも………………。
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