夏の終わりとアキノソラ
「別に、好きとかじゃ全然ないんだよ?ただ、いつもあたりまえのように近くに居たカズが、私の知らないところで恋してたなんてちょっと意外だったというか…私にはそういう人がいないのに置いて行かれた気がしたというか…よくわかんないけどなんかもやもやするような・・・」


「ふふ、少し淋しい気持ちになったのかしら?」





《淋しい》

ちょっとだけ、そうなのかもしれないな、と思ったけれど、なんとなくおばあちゃんの前でそれを認めることができなくて

「んーわかんない。」

と答えておいた。


私は、“誰か”や“何か”にあまり期待したことがないから、淋しいとか悲しいとかいう感情とは割と無縁のところで暮らしてきた。幼い頃から、両親は共働きで、最初は淋しかったけれど、そのうちそれが普通になってしまって。結局諦めた。

初めて彼氏ができたときもそう。最初はずっと一緒に居ることも望んだりしたけれど、最後にはそんなはずはないのだと悟り、期待することはやめたのだ。




だって。
どうせ叶わない望みならば、最初から期待なんかないほうが傷付いたりしないもの。


だから、《淋しい》なんて、素直に認められるはずがない。
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