夏の終わりとアキノソラ
「汐ちゃん、そんなに飲んで大丈夫かい?」



「別にどうってことないよ」
あまりお酒は強くない私が、5杯目のビールを口にしたとき、大将が心配そうにきいてきた。



大丈夫。私は。
どうせ、いつかは去るのだ。今は、カズと女の人が気になるかもしれない。
ほんの少し、胸が痛いかもしれない。
でも、例えそれがなかったとしても、いつかはいなくなるんだ、大将もカズも。所詮は、従業員と客の関係なんだから。ずっと続くわけじゃない。ずっとここに来るとも限らない。
そんなもんなんだから。



私はこんなことを考えながら焼鳥を口に放った。



「じゃぁ、私はそろそろ」

「あ、じゃぁそこまで送りますよ。」



どうして。聞きたくないところだけ聞こえてくるんだろう。今まで散々うるさかったおじさん集団が、ほんの一瞬静かになっただけなのに。

私の耳には、やけにはっきりとその会話がきこえてしまった。


今まで、お客さんの中でカズが送っているのは私だけだと思ってた。
それだけは、私の特権って思ってたのに。




なーんだ。また私一人の勘違いだったのか。
大将も、カズも、私だけは特別大事にしてくれていると思ってた。
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