夏の終わりとアキノソラ
「うるせ」
そういいながら、カズがくしゃっと笑った。ああ、やっぱり私はまだこの笑顔が忘れられないのかもしれない。


「じゃあ、またね。」
私はそう言って歩きだした。



「汐!」


呼び止められて、とりあえず振り返ってみる。

「コーヒーでも飲まねぇ?奢るけど。」


私は特に断る理由もなく、頷いてカズをみた。まだ頭はうまく働いていなかった。


「買ってくっからそこに座って待ってろ。」


私は言われた通り、ソフアに腰をおろした。


もう、カズのことも、ふくすけのことも、だいぶ思い出さなくなっていたのに。
思い出しても、わりと平気になっていたのに。


というか、私は一体いつからカズをそういうふうに見ていたのだろう。あの日、深雪さんをみていなかったら、カズがこんなにも私の心を支配していたなんて、きっといまだに気付いていなかったと思う。



「ほらよ。」


私に缶を渡してから、カズが隣に座ってきた。

「なんで、野菜ジュース?コーヒーは?」

私の質問には答えないで、「この間の女の人、どう思う?」と聞いてきた。


「どうって?綺麗な人だね。あれが例の彼女?」


「………まぁな。」
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