夏の終わりとアキノソラ
「なんで急に、もう店に来るのやめんの?」



「ああ。別に深い意味はないけど。」

どきっとしたが、咄嗟に嘘をついた。本当は、もういけないからだ。いくのが辛い。


「失恋したら、また来りゃいいじゃん。」

「失恋?」何のことだか一瞬わからなくなって、でもすぐに思い出した。病院で彼氏ができたことにしていた。


「いつもそうだろ。別れたら店に来る。」


「そうだね。」


「次もまた、そうすればいいじゃねぇか。なんで来ないなんて言うんだよ。」


「別に、気分だよ。カズこそなんでそんなこと言うの。」


「…親父が、淋しがる。」


ぼそっとカズが言った言葉をきいて、親父がかよ、とつっこみをいれてしまった。別に、期待なんかしてないけど。


「また気が向いたら大将には会いに行くから。ってか、わざわざそんなこと言いにきたの?お説教のために?」

ややうんざりそうに私が言ったにも関わらず、いつもとかわらぬ調子で「心配だったんだよ、俺が。」とカズが真顔でいってきた。

自分の顔がすこし緩むのがわかった。
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