夏の終わりとアキノソラ
私が、何度失恋してもまたすぐに立ち直れるのは、“ふくすけ”という存在があるからだ。
どんなに辛くてもここに来ると大将はいつも変わらず温かく迎えてくれるし、カズも愛想はないけれど本当はとても優しいのだということを私は知っている。
ここがなければ、私はこんなに元気ではいられないだろう・・・


「おい、何ぼーっとしてんだよ。行くぞ。」

突然呼び掛けられたので驚いて振り返ると、カズはもう歩き出していた。
私は少し小走りでその大きな背中を追いかける。


「お前、また振られたのか?」


「・・んー。」


「懲りねぇな。」

カズは呆れたような、でも優しい表情で笑った。
私は、カズのこの表情がとても好きだ。なんだか、本当のお兄ちゃんみたいで安心する。カズは私より4歳年上だから、もうすぐ27歳になるはずなんだけれど、そういえばカズの恋愛話はあまり聞いたことがない。いつも私が失恋しているからかもしれないけど。


なんとなく気になったので、(多分)出会ってから初めて聞くであろう彼女のことについて聞いてみた。


「いねぇよ。好きな奴はいるけど。」


意外な返事だったので、一瞬、そのあとに続く言葉が見つからなかった。


なんとなくだけれど、『俺は女には興味ねぇよ』とか言う返事が返ってくるのだと思っていた。
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