dog life
部屋は恐ろしいほどに荒らされていた。荷物はひっくり返され、床に和の服やらタオルやらが散らばっている。その中の数枚はびりびりに破かれていた。

「えっ…何これ…」

さらに、鼻を刺激する異臭がする。よく見ると部屋の隅に水が広がっていた。その水から臭いがする。

福は和のタオルをくわえ、尻尾を振る。呆然としていた和はようやく我に返った。

「こら!!福!!」

部屋を荒らした犯人が福であることはもう明白だ。和は福を叱ろうとして、昨日の典子の話を思い出した。

「もしもいたずらをしてしまっても、叩いて叱るようなことはしちゃダメよ!」

和はどうしたらいいのかわからず、固まる。その周りを福が楽しそうにくるくると回っていた。



「ああ〜なるほど。和くんは犬の洗礼を受けたってわけか〜」

ゴールデンレトリバーの散歩に行くために外に出た和は、一緒に散歩に行くあかりに起こった出来事を話した。すると、あかりは「懐かしい!」と言って笑う。

「私も一緒の洗礼受けたよ〜!起きたら部屋ぐちゃぐちゃでさ!泥棒に入られたのかと思った」
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