dog life
ため息をつく和の周りを、福は鳴きながらはしゃぐ。

福はいたずらをするが、和は福をかわいいと思っている。ボールを投げると一生懸命走ってくわえて持ってくる。最近、「待て」が少しずつできるようになってきた。

「ちょっとずつ覚えていこうね」

ティッシュを片付け、和は福を撫でる。

事件が起きたのは、その翌日のことだった。



その日の朝、和が部屋を出るとあかりに声をかけられた。

「和くん!ちょっといいかな?」

「何?どうしたの?」

あかりは少し恥ずかしそうにしながら、和にガトーショコラの入った袋を渡す。きれいにラッピングされた袋に、和は「えっ?これって?」と驚く。

「手作り!典子さんと作ったんだ。こう見えてお菓子作り好きなんだよね」

頰を赤くしながらあかりは言った。

誰かから何かをもらうのは、和にとって久しぶりだ。それが言葉に言い表せないほど嬉しい。

「ありがとう、あかりさん」

和は食べるのを楽しみにしながら、テーブルの上にガトーショコラを置いて仕事に向かった。この時、福は気持ちよさそうに眠っていた。
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