dog life
声のした方を見ると、ショートカットの元気そうな女の子が手を振りながらこちらに向かって走ってきていた。歳はたぶん和と変わらないだろう。

「遅いと思ったら、またうんちく聞かしてたんですか?」

困ったように笑う女の子に、典子は「やっちゃった〜」と幼い子どものような笑顔を見せた。

女の子は和の方を向き、微笑む。

「急にごめんなさい。典子さん、犬博士で犬のことを何でも知ってるんだけど、うんちくを一度始めたらもう止まらないんだ〜」

「はあ…。そうなんですね」

和はとりあえず笑顔を作る。女の子は自己紹介を始めた。

「こんにちは!私は春川(はるかわ)あかり!君のことは典子さんから聞いてるよ。よろしくね〜。ちなみに好きな犬種はチワワです!」

和も自己紹介をし、好きな犬種は柴犬と答えた。そう言った途端に典子の目が輝く。

「柴犬!!日本の天然記念物に指定された七つの犬種の一つね!日本犬種で一番飼われている犬よ!!あとはーーー」

「典子さん!ストップ!!」

長いうんちくが始まる前に、あかりが典子を止める。和はほっと胸を撫で下ろした。

「さて、ここからはあかりちゃんに案内してもらおうかな!あかりちゃんはここで働き始めて二年目!歳は和くんと変わらないけど、かなりのベテランよ」

典子が伸びをしながらそう言うと、あかりは「そんなことないですよ〜」と顔を赤くして照れる。
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