君からのヘッドフォン
「離して…お願い…」

「…ん」


小さい声で懇願すると、案外簡単に離してくれた。

はぁ…。

ダメだ、こいつといたらわかんないことが増えてく。


私は勢いで階段を下り切ると振り返った。


「バカ」

「…なんでそんな涙目なわけ」


ポケットに両手を突っ込んで、のんびり下りてくる松下くん。

くっそ…私みたいにコケで足滑らせればいいのに。


「別に、涙目でもないし」

「いや…もう、流れてるけど」


私は顔に触れる。

生暖かい、水の感触。


…なんで私、泣いてんの。
< 57 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop