君からのヘッドフォン
「深井さん」

「ん?」

「あのさ…下の名前で、呼んでいい?」


私の隣で少し不安げに問われる。

なんか、子犬みたい。

いや、そんなの。

断る理由なんてないじゃないですか。

だって、伊澄くんに、この素敵なハスキーボイスに私の名前を呼んでもらえるなんて、幸せにもほどがあるじゃないですか。


「どうぞ?」

「ふふっ、ありがと、栞帆ちゃん」


はわぁぁっ、これは心が打たれる。

このハスキーボイスを今は私が独り占めしてるなんて、なんて素晴らしいことだろう。
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