君からのヘッドフォン
それと同時に、私が手を伸ばしていい存在じゃないって、すぐにわかった。


あの屈託のない笑みは私が捨てたもので、

あの優しさは私が失ったもので。

あの、純粋な瞳は私がどこかに置き去りにしたものだった。


けどさ、自分が持ってないものこそ、欲しいって思ってしまうのが人間でしょ?

あの日から私の頭のどこかには松下くんがいて。


気づいたら、あいつのことを──────。


いや…まだ結論は出さなくていい。

そんなのしたって、何も変わらないんだし。
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