新月の夜はあなたを探しに
彼女はやはり見ていたのだろう、未来の事故を。そして、葵音を守ってくれたのだ。
白いワンピースは、事故当日に黒葉が着ていたもの。だから白いワンピースを彼女は嫌がっていたのだ。
そんな事も知らずに、葵音は彼女に贈ってしまった。黒葉が1番欲しくない物だったというのに。
悲しみながらも笑顔を見せて、運命を身に纏おってくれたのだ。
もう少しで、事故に遭うと知って。自分が傷つくと知って、彼女はどれぐらい怖い思いをしたのだろうか。
怖くて仕方がないはずなのに、助けてくれたのだ。
昨日のように泣きそうになるのを堪えながら、葵音は日記を閉じようとした。
けれど、後ろのページが少しだけ曲がっているのに気づいた。
他のページは綺麗なのにどうしてだろうか?
葵音はそのページを何気なく開いた。
すると、『葵音さんへ』と書かれて始まる手紙が長く書かれていたのだ。
それを見た瞬間、呼吸が止まってしまうのではないかというぐらいに、葵音は驚いた。
それを見ていた累も心配そうにしていたが、葵音の顔を見ると、椅子に座ったまま頷いた。彼も何があったのかを悟ったのだろう。
震えてしまいそうな指を何とか抑えて、葵音はそのページをしっかりと見つめた。
窓から入る太陽の優しい光りが、黒葉の手紙をキラキラと照らしているかのように、日記のページの部分に陽の光りが入り込んでいた。