新月の夜はあなたを探しに
エピローグ
エピローグ
★☆★
「葵音さん、早くっ!行きましょう!」
「こら……あんまり走るな。まだ本調子じゃないんだからな。」
「大丈夫です。上映始まってしまいますよ。」
「わかったよ。ほら、手繋いで。」
「はい!」
いつもよりテンションが高い黒葉を見つめていると葵音も自然と笑顔になっていく。
この日を楽しみにしていたのは、黒葉だけではなかった。
黒葉は目覚めてから少しずつ体力を取り戻し、リハビリをしっかりと受けていたからか12月には退院する事が出来た。
その後もあまり外には出ないように黒葉に言いながら、自宅でゆっくりと過ごしていた。と言っても家事は止めることなく、しっかりとやってくれていたところは、彼女らしかった。
けれど葵音の言いつけを守って外出しなかった理由はしっかりとあった。そうでなければ、「買い出しに行く。」や「一緒にお散歩に行きたい。」などと甘えて来ただろう。
その理由が、クリスマスイヴのデートだった。
事故の日に行くはずだったプラネタリウムに行こうと誘うと、黒葉はとても喜んでくれた。海の星空は、季節的に寒いので難しいが、プラネタリウムならば室内だし座って見るものだから、そんなに疲れないだろうと思ったのだ。
それまで外出を我慢すること、と伝えると、黒葉はプラネタリウムのために必死に我慢していたのだった。