新月の夜はあなたを探しに
 



 そんな気持ちを落ち着かせながら、葵音は黒葉の左手を取り、そして小さく口付けを落とした。
 その場所は左手の薬指だった。

 「……え………。」
 「次は、ここに指輪をプレゼントするから。予約って事で。」

 突然の口付けに驚きながらも、キスの意味を理解したのか、顔を真っ赤にしながらも満面の笑みを浮かべてくれる。
 彼女も同じ思いだとわかり、葵音は安心してしまう。


 「…………はい!楽しみにしています。」


 嬉しすぎたのだろうか。気持ちが高まりすぎたのかもしれない。
 ぽろぽろと涙を流し始めた彼女の顔を、葵音は両手で包んだ。



 黒葉はずっと苦しみ、ずっと葵音を見続けてきてくれた。
 だから、次は自分が黒葉をしっかりと見守り幸せにしていこうと葵音は決めたのだ。


 けれど、どちらかが犠牲になる幸せではなくて、2人が笑っていられるように。
 それが大切なのだと、わかったのだ。



 「2人で幸せになろう。きっと、星が見てくれている。」
 「はい。………今、以上に幸せになりましょう。毎日幸せが続いてるんです。葵音さんとずっと一緒にいます。」
 「あぁ………愛してるよ、黒葉。」
 「私も、です。」


 沢山泣いた日々立ったかもしれない。
 悩んで、苦しんで、辛かった事もあった。

 けれど、それでも手放したいとは1度も思わなかった。
 それほど、特別で愛しくて、大切な人なのだ。

 星が認めてくれた、この運命に感謝をしながら、葵音と黒葉はゆっくりと唇を合わせた。


 星たちがいつもより輝いて見えたのは、きっと2人を祝福してくれたからだろう。

 そう思い、葵音は微笑んだのだった。







             (おしまい)
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