新月の夜はあなたを探しに
部屋の中を葵音は走り回り探したが、どこにもいなかった。何でいなくなったんだ?といなくなった彼女に心の中で問い掛けながら、部屋を出ようとした時だった。
がちゃりとドアが開いた。
「あっ!!葵音さん?」
「………おまえ、どこに行ってたんだ………。」
外から帰ってきたのは、黒葉だった。
両手にはビニール袋を持っている。
「鍵を開けっ放しにするのは申し訳なかったんですが、冷蔵庫に何もなかったので、買い出しに行ってきました。」
「あ、あぁ……。そうだったのか。」
「すみません……朝御飯というか、ブランチを作ろうかと……ダメでしたか?」
焦った様子の葵音を見て、彼女は怒っていると思ったようだった。
葵音は、黒葉の頭をポンポンと撫でてから、彼女の持っていた袋を受け取った。
「ダメじゃない。助かるよ、ありがとう。」
「っっ!はい!」
「………ただ、これからどこかに行く時は俺に言ってから出てくれ。」
「そうですね………。わかりました。」
シュンとした反応をしている黒音を見て、葵音は思わず笑ってしまう。
こういう素直な反応をする女を見るのは、初めてで可愛いなと思ってしまう。
「お腹空いてるんだ。何か作ってくれないか?」
「はい!」
黒葉は、急いで靴を脱いで台所へ向かった。
それを微笑ましく見つめながら、黒葉も台所へと向かった。