新月の夜はあなたを探しに
「うまいよ。料理上手なんだな。」
「お口に合ってよかったです。」
ご飯に味噌汁、鮭の塩焼きに、煮物、ほうれん草のおひたし、などの和食の料理がテーブルに並んでいた。それを口にすると、とても美味しかった。
「料理好きなのか?」
「好きですね。実家でもご飯を作っていたので、基本的な家庭料理は作れますよ。」
「すごいな……。助かるよ。」
葵音が箸を止めずに食べ続ける姿を黒葉は嬉しそうに眺めていた。
普段ほとんど料理をしない葵音にとって、久しぶりの手料理だった。いつもコンビニやスーパーのお弁当や、外食だったし、作ったとしてもご飯を炊いたり、ラーメンを作るぐらいだった。そのため、彼女の料理はとても温かく優しさを感じられた。
「あの……私はこんな仕事をすればいいのですか?」
「あぁ、そうだな。家の事はおまえに任せたい。仕事に余裕がある日とか、休みの日にジュエリー作りを教えるのでいいか?」
「はい!」
「じゃあ、そうしよう。毎月の末にお金を渡すから。まぁ、値段は………これぐらいでどうだ?」
「そんなにですか!?」
スマホの電卓画面の表示を見て驚く黒葉を、葵音は苦笑しながら見つめた。
「それぐらい助かるってことだ。………あぁ。あと、この材料費とか買ったお金は請求しろよ。」
「そんな!これぐらいはいいですよ……!」
「あのな………家政婦雇って、料理はいいけど材料費は払ってもらうなんてないだろ。」
「それはそうなんですけど……。」
「あとで渡すから。まぁ、話しは後だ。おまえも食べろ。」
「…………いただきます。」
すっかりと日が昇り、お昼の時間になっていたが、2人は今日初めてで、そして2人で食べる初めて食事を楽しんだのだった。