新月の夜はあなたを探しに



 休みの日を週1で作りながらも、葵音はいつも仕事をしてしまっていた。ジュエリー作りが趣味だという事もあり、仕事をしてしまうのだ。たまにリフレッシュも必要だと友人には言われるが、今まで特に必要としていなかったので、働き続けていたのだ。
 けれど、こうやって何の予定もなく気ままに過ごす日というのもいいな、と作業をしながら思い始めていた。
 こっそりと後ろを見ると、真剣にデザインを仕上げている彼女の、背中が見える。
 髪は邪魔になるのか、星のチャームがついたゴムでまとめていた。
 そんな姿を微笑みながら見つめ、葵音はまた作業に戻った。



 「どうだ。そろそろ出来たか?」
 「もうちょっとです……。はい!出来ました。」

 ある程度、時間が経った頃、葵音は集中している彼女に声を掛けた。
 くるりと葵音の方を振り返り、黒葉は嬉しそうに紙を葵音に渡した。何度も書き直したのか、紙はよれている。どんな作品を作ったのか楽しみになり「見せてくれ。」と言い、葵音はさっそく紙を受け取った。


 「どれどれ…………。」
 「ど、どうでしょうか?」
 「………これは…………。」

 
 葵音は、紙を持ったまま固まってしまった。
 そこには、何かの記号なのか5つの角がある形がふにゃふにゃな線で描かれていた。それが複数付いているリングのようだが、葵音にはそれが何なのかよくわからなかった。
 

 「黒葉……これは?」
 「はい!星をイメージしました。私が冬生まれなので、冬のダイアモンドの形にしてみました。」
 「あぁ……冬の大六角形か……。」



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