新月の夜はあなたを探しに
不思議な女が見つめていた交差点で、葵音は信号待ちをしていた。
ここの道路は交通量が多く、トラックもよく走っており、信号が止まるまで待たされるのだ。
そんな時間さえも、葵音はジュエリーの事を考えていた。スターチスの花のデザインがまだ完成していないのだ。大体は出来上がっていたが、葵音は納得出来なかったのだ。
何が足りないんだろうか……もう少し細身にしたほうが綺麗なのか。それとも花の数だろうか………そんな事を考えていた時だった。
突然、右腕を引っ張られてのだ。
葵音は驚いてそちらを振り向くと、黒髪に真黒真珠ような瞳の、あのコーヒーショップに居座っている女がいた。どこか焦っている表情で、葵音を見つめていた。
葵音の腕を掴んだまま、ぼーっと見つめる女を、葵音は不思議に思いながら、「な、何?」と声を掛ける。
すると、ドキッと体を震わせて葵音を掴んでいた腕を離した。
けれど、目線はずっと葵音を見つめていた。緊張からか、少し潤んだ瞳からは自分より年下だろう女性なのに、葵音は色気を感じてしまった。
「あの………、星はありますか?」
その声は少し震えていたけど、透きとおった綺麗な声だった。
これが葵音と不思議な彼女との最初の出会いだった。