新月の夜はあなたを探しに
「今日も違った。」ではない文章が書かれていたのは、葵音と黒葉が初めて会った日の物だった。
そこには、「やっと出会えた。これでいつでも大丈夫。間に合ってよかった。今日も違った。」と書かれていた。
いつでも大丈夫とは何なのだろうか?
何に間に合った?
何が違うんだ?
日記を見つめても答える出るはずもなかった。
その後も、「今日も違った。」が続いていたけれど、今日に近づくにつれて「今日も違ったけれど、近い気がする。」、「もう少しかもしれない。」と続いていたのだ。
「………黒葉、どういう事なんだ?」
日記を持っている手や、額には暑くもないのに汗をかいていた。それが冷や汗だとわかると、葵音は、身を震わせた。
黒葉ら何を待っているのか。
どうして葵音の元に来たのか。
謎は深まるばかりだった。
日記を持ったまましばらく呆然としてしまった。けれど、そろそろ彼女が帰ってくる頃だと思い、日記を元の場所に戻し、葵音は黒葉の部屋を後にした。
その後、作業場に戻っても仕事がはかどらなかったのは言うまでもなかった。