新月の夜はあなたを探しに
葵音は、彼女が横になるベットに体を寄せて黒葉の顔の横に手をついて覆い被さるように近づいた。
黒葉は、押したされたような体勢に少し緊張しながらも、葵音に視線を向けた。
彼女の柔らかい頬を、そっと撫でる。
それだけで、指が熱を持ち始めるのがわかった。
「俺は不思議とお前が特別に感じてるんだ。……だから、黒葉にそう言われると俺も嬉しいよ。」
「特別……ですか?」
「あぁ……今まで付き合ってきた人とは全く違う。何がって言われるとわからないけど。でも、会ったばかりの人間を助けて一緒に住んで、好きになったんだ。そういう事なんだろうな。おまえと、もっといろんな事をしていきたいと思うよ。」
「………私ももっと葵音さんも感じたいです。いろんな葵音さんを見たい。」
「………そういうおまえのまっすぐで正直なところ……弱いんだよ。」
葵音は、苦笑しながらも気持ちの高ぶりを我慢出来ずに、黒葉の唇にキスをした。
何度も繰り返していくうちに、黒葉の呼吸は荒くなり、キスも深くなる。
ベットも葵音が動く度にギシリと音がなり、黒葉の瞳も熱を持っていく。そして、唇からは荒い呼吸と水音が鳴り、静かな部屋に響いた。
視覚も聴覚でも、葵音の体が熱をおびてきて、欲情してしまう。
彼女が自分を煽るからいけないんだ。
そんな事を思いながら、キスをしている時に葵音の手が彼女の服の中にそっと入り込んでいく。
もうそれは無意識だった。
彼女に触りたいという気持ちが大きくなりすぎて手が動いた。
すると、彼女は「あっ………。」と今まで聞いたことのないような女の声を出して、体を震わせた。
それを見て、葵音はハッとなり黒葉から体を離そうとした。
あぁ、また自分の気持ちを抑えられなかった。黒葉を、怖がらせてしまうつもりはなかったのに。
そんな風に後悔をしながら、「ごめん……。」と、言って体を離そうとするが、それを彼女によって止められてしまった。
黒葉が葵音の体に腕を絡めて抱きついてきたのだ。
「黒葉……?」
「………葵音さんをもっと感じたいし、いろんな葵音さんが見たいって、いいましたよね?」
「………黒葉、この状態でその言葉を言う意味がわかっているのか?」
黒葉は、目を潤ませ、頬を紅潮させて葵音を見上げた。葵音を抱き締める腕の力が少しだけ強まって、また彼女との距離が狭くなる。
「わかっています。………知らない葵音さんを見せてくれませんか?」
「……っっ………。」
彼女のその言葉で葵音の理性がとんでしまった。
飢えた獣のようだと、心の中で冷静に自分の行動を見つめながらも、葵音は黒葉の体を求め事をやめられなかった。
葵音が彼女の優しい瞳と、温かい体温、そして彼女自身の快楽に溺れるのは、あっという間の事だった。