新月の夜はあなたを探しに
20話
20話
何故、自分はこの女に夢中になるのだろうか。
彼女からの熱を感じ、朦朧とした感覚の中で、葵音はそんな事を考えていた。
性格、表情、ミステリアスな部分。
どれも好きで仕方がない。
けれど、彼女と抱き合う中で感じたのは、彼女の視線だ。
黒葉と目が合うだけで、ドキリと胸が鳴るし、目を瞑ればこちらも見てほしいと思う。
睫毛が影を落とすほどの長い睫毛が上を向くと、そこには黒い宝石がある。
そんなキラキラとした瞳を見つめ、見つめられるのが堪らなく好きなのだと感じた。
お互いの熱を感じる中で、彼女が初めてだろう行為をしていくが、黒葉は不安になる事もないのか、ただ葵音が与える熱と快楽に溺れているようだった。
声を聞くだけで、激しく興奮してしまう。
そんな状態ががっついているようで恥ずかしかったけれど、それを止められるほど、葵音は紳士にはなれなかった。
目が合えば微笑み、そして抱きついくる彼女がいとおしく感じ、葵音もいつもより夢中になってしまう。
今まで経験しきた物とはまったく違う感覚に戸惑いながら、彼女から与えられる幸福感に浸りながら、葵音も溺れていったのだ。
「………悪かったな。止まらなかった。」
汗ばむ体をベットに預けて、小さい吐息を繰り返して深く眠る黒葉にそう声掛ける。もちろん、返事はない。
汗をかいて額に張りつく前髪を避けながら、葵音はそこに軽くキスをした。
「こんなに我を忘れるぐらいにがっつくなんてな……自分でも信じられないよ。」
苦笑しながら黒葉が寝ているすぐ横に体を倒す。
けだるい体が、妙に心地がいい。
黒葉を起こさないように優しく抱き締めながら、葵音も目を閉じる。
「俺に会いに来てくれてありがとう。どんな理由であっても、今は嬉しいんだ。」
虚ろげだったけれど、寝ている彼女にそう伝えると、葵音は黒葉と同じようにすぐに寝てしまった。
彼女のゆっくりとした鼓動に誘われるように…………。