新月の夜はあなたを探しに
「私、きっと明日見るはずの夜の海よの星空より、プラネタリウムの星たちよりも、ここの星空が1番好きだと思います。」
「そうなのか?ここよりずっと沢山見れて感動するかもしれないぞ。」
「そうかもしれないんですけど………。でも、ここで見てきた星空にはいつも葵音さんとの思い出があって。沢山の葵音さんを独占出来たから……。ここが大好きなんです。」
そう言った後、黒葉は星空を見ていた視線を葵音にうつした。
彼女の瞳には、星空見た時のままのようにキラキラした物が無数にあるように見えた。
それが溜まった涙だと気づくのが、少しだけ遅くなった。それぐらいに綺麗だった。
「葵音さんと出会えてよかったです。こうやって好きな人と一緒に居れる事だけで幸せになれるなんて、初めて知りました。この感覚を忘れたくないです………。きっと、忘れない。」
「これから、ずっとずっと続けていけばいいだろ。俺はずっと黒葉と一緒に居る。」
「………そうですよね。」
幸せを紡ぐ言葉のはずなのに、黒葉の顔は今にも泣き出してしまいそうだった。
最後に思い出を語るようにも聞こえるその言葉を、葵音は複雑な気持ちで聞いていた。
なんでそんな事を言うのか。今、彼女に問えば教えてくれそうな気もした。
けれど、葵音がそれを出来なかったのは、彼女の秘密を知るのが怖かったのかもしれない。
目の前から黒葉がいなくなってしまう真実が現実に起こってしまうのが怖かった。
自分の考えすぎで気のせいだと思っていたかったのだ。