新月の夜はあなたを探しに
「葵音っ……心配したんだからなー!」
「……………なんで、おまえがいるんだ?」
「占いで悪い予感がしたから葵音に電話したんだよ。そしたら、病院から折り返しの電話があったんだ。おまえ、親族いないだろ。」
「あぁ………そうだったな。いろいろ悪かったな。」
次の日、目が覚めると病室には影浦累が泣きそうな顔で葵音を見つめていた。
男の泣き顔は久しぶりに見たな、と苦笑しながら彼を見た。
昨日より体は動くようで、累にベットを少し起こして貰い、彼と話をした。
「記憶が曖昧なんだが、俺は事故に遭ったんだろ?」
「あぁ……原付きのバイクに跳ねられたんだ。幸い、大怪我にはならなかったからとりあえずは大丈夫だよ。」
「それで……黒葉は?」
「…………それは。」
累は言葉を濁し、視線をずらした。
言いにくいのだろう、累はしばらく何かを考えるよう黙った。
「やっぱり、黒葉が俺を押して事故を起こしたのか?」
「それは違う!」
「………違う?」
「………はぁー………葵音、落ち着いて聞けよ。」
黒葉が葵音を押してバイクにはねられたのではない。
それがわかっただけで、葵音は少しほっとしてしまった。
彼女は自分を、傷つけようとしなかった。それだけでも安心した。
彼女を信じてよかった、と思った。
「黒葉がどうしたんだ?」
「………おまえを助けたんだよ。」
「え、助けただって?」
どういう事だろうか。
実際、葵音は怪我をしているのだ。彼女が自分を助けた、というのがわからなかった。
累は、一度自分を落ち着けようと小さく深呼吸をする。
そして、ゆっくりと話を始めた。
彼女のとった行動の意味を。