卒業式の祈り
「あったかいね、これ。フワフワだし、それに三井くんの香りがする」

「バッ、バカ、そんなこと言うなって。だけど気に入ったんならそれ、やるよ」

「えっ、そんなのわるいよ」

「いいから、大学の合格祝いにサラにあげる」

よく通る優しい三井くんの声が私の耳に焼き付いている。

この春から私達は、同じ大学に通うことが決まっていた。

彼は理系で、私は文系の学部。

お互いの将来の夢の話しをしていて、なんとなく同じ大学を目指すことになっていたんだよね。
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