卒業式の祈り
「三井くん、そんなに早く歩かないで、もっとゆっくり歩いて行こうよ」

駅から大学までの坂道を彼は軽々と上がっていく。

「サラ、はい」

振り返った彼が爽やかに笑って手を差し出してくれる。

ああ、カッコいい。

その笑顔の破壊力は半端なくて、ドキドキしてしまう。

彼女になったけど、彼の素敵さには、まだまだ全然慣れなくて顔が急激に熱くなる。

「どうかした?」

「ううん、なんでもないよ」

差し出されたその手を握り返した。

私の手よりも硬くて骨ばった大きな手に、キューンとなる。
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