虹が架かる手紙


バックから取り出した上履きを置いて人けのない廊下を1人歩く。



足取りは重くて、少しボロついたカバンにぎゅっと力を込める。



遅刻ギリギリで教室にたどり着くと、一気にみんなの空気が変わる。



入った瞬間に私はすぐに孤立させられる。




またしぶとく学校来ちゃったの?って言われているような感じの目つきで私を睨むたくさんの目。



そして、私をバカにする彼女の甲高い笑い声。




その全てが私の心に針となって刺して来る。



「お前、今日も汚ねーな、」



クスクスとした笑い声は360度から聞こえて机の中身を確認すると、紙っぺらに悪ふざけた言葉が綴られている。




「キモ。」とか「消えちゃえば?」とか「裏切り者。」そればっかり。




慣れている言葉に動揺もせずに席につくと、「うっわ。かわいそーに誰がやったんだろーね。うちらが机綺麗にしてあげるよ。」と机の前に2人組の女の子が近寄ってくる。



笑顔で近づいてくる彼女らは、嬉しそうに黒板消しを持ってくる。




何をするのか想像がつく、でも逃げない。




ううん、逃げることが出来ない。




別にされたっていい、もうどうだっていいんだよ。




黒板消しを2つでパンパンと強く叩かせて私の頭の上で粉が舞い散る。



2人の表情なんか、見えないほど俯いた私に見えるのは白くなっていく机。




「ほーら、綺麗になったじゃんー、うちらに感謝してよねー。」



棒読みに読まれたセリフは嫌味にしか聞こえない。



爆笑するのを抑えているみたいだけど、笑いがこみ上げていたもう1人は


「あーぁ、やってあげたのに『ありがとう』も言えないんだー。」



と急に真顔になって私の顔を覗くようにしゃがむ。




私は無表情で彼女から、視線を逸らす。



粉が髪の毛に付いて、顔も気持ちわるほどかかっている。



「ふーん……………なんか言えよ!」



彼女はぶっきらぼうに声をあげて私の机を勢いよく蹴り飛ばし、私は椅子から落ちそうになる。



「あーぁ珠里が怒っちゃった。本当にクズだね七彩は。」



彼女らに言い返す言葉も何も無い。



私に残っているものも何も無い。



やめてって言えればいいけど、言ったらもっとエスカレートしそうで何を言えばいいのかなんて分からない。



それに、そう言える勇気も気力も何も残っていない。



周りからもみんな「黙ってるなんてずりーぞ。」などとした声が飛び回る。




どうして、みんな笑っているの?




どうして、私が笑いものにされているの?




私はどうすればいいの?




この教室には光なんて存在しない、私は真っ黒なまま時が流れるのを待つだけ。



先生が来るまであと5分、バレたりしたら、私のいじめはよりいっそう強くなる。



ボロボロになった心で私は席から立ち上がる。



「汚なーい、近寄んないでよ、クズ。」



クスクスした笑い声は私の周りではいつも途切れない。



いつから、涙が出なくなったのかな、



苦しいのに、涙さえ出ないなんて私は本当にクズかもしれない。



大声をあげて泣くことができたら少しは楽になるのに…

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