虹が架かる手紙
そんな中私を真っ黒に染めて光をシャットダウンさせたあの日が私を襲った。
『七彩!! あいつをあの倉庫に呼び出してよ。』
『え?』
それは突然だった。
その言葉を聞いた瞬間に私の顔から一気に熱が冷めていくみたいに自分でも青くなっていることが分かるほど冷汗をかいた。
あいつ、と聞いただけでも私は理解できてしまう。
私、どんだけ酷いやつなのかな。
もう、これ以上ひどい奴にはなりたくなんかなかった。
『今日の放課後、楽しみにしてるわ。』
珠里は私に強そうな背を向けて、歩きだす。
『わ、私がやるの?』
震えて絞り出した声は迷いと動揺が隠れている。
『当たり前じゃない。七彩がやった方が効果的だし。』
にこっと笑った珠里の裏には怖い顔が隠れている気がしてゾクッと胸の中でざわきだす。
私はやるしかなかった。
やるしか私には選択肢はなかった。
弱かったんだ自分が、なりたい自分とは正反対に進んでいく自分がもう嫌で嫌で仕方ない。
結局私は下駄箱に置き手紙を入れて置いて放課後私は倉庫の前で待った。
案の定、小滝君は来て私に『富永さん……どうしたんですか?』といつものような優しい表情で声をかけてくれた。
私は答えることが出来ずに立ち尽くすと、ケータイの着信音が私のポケットから聞こえてケータイに目を通した。
私にとってはそのケータイ音は地獄の音楽のように聞こえた。
『倉庫に閉じ込めるの。鍵なら七彩のポケットに入れておいたから。』
とメッセージが入っていた。
足の震えが止まらなくて、動かない、まるで足に根っこが生えたような感覚。
やらなきゃ、早くやらなきゃいけないのに。
分かってたはずなのに倉庫に呼び出すということは閉じ込めるのかなって…
『富永さん?大丈夫ですか?』
お願い、優しく声をかけないで?
私はこれから酷いことするのに。
君が優しいから、優しすぎるから余計に君を傷つけたくないんだよ。
惨めになるの、自分が最低になってく。
『じゅ…………珠里が倉庫に忘れものしちゃったみたいで、1人じゃ心細かったから、ごめんね。呼び出しちゃって。』
『大丈夫ですよ。手伝いますね。』
あぁ、なんで私はこんな優しい人に嘘をついて閉じ込めなきゃいけないの。
卑怯者だよね。私って。
分かってるの、自分では。やらなきゃいけないの。
小滝君が倉庫に入ったのを確認して私は1人外に出てドアを勢いよく閉めて、手汗と震えが止まらない手を必死に動かして鍵を閉めた。
『富永さん?』
って中から、声が聞こえたけど私はその場を逃げ出した。
最低だ。 私、最低だ。
涙腺が潤んで目の前もぼやけていって私は学校の敷地内で建物に背を預けて座り込む。
今にも消えそうな弱い自分がやっぱりいてどうしようもなく涙が溢れてそれを私は止めることができなかった。