犬猿だったはずの同期を甘く誘惑したら




車に戻ってもだんまりのままの守屋だけど、手のひらをぎゅっと握っていることで、彼女が少し葛藤している様子が見える。


「美味かったな」

「楽しかったな」


という俺の言葉にも「うん。」とだけ返してくれる守屋の頭にきっと俺の言葉はしっかりと流れてねぇんだろう。



「ほんと、お前って可愛いなー」



試しに言ってみた言葉にも「うん。」と返ってきたから間違えない。



誰がここまでの展開を予想できただろう。


思ったより順調なんじゃねーの?
と自画自賛しながら守屋を家まで送った。



帰り際、「おやすみ」と言う俺の言葉に「おやすみなさい」と素直に返してくれた守屋の頭をぽんぽんと撫でると、俺の方をポカーンとした表情で眺めていた。



おいおい。ほんと、どーした?
マジで俺にそんなドキドキしてくれてんの?


そんなことをさすがに本人に聞く勇気は出なかったものの、なんとなく今までとは違う守屋の対応にこれからを期待しながら俺は家に帰った。






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