犬猿だったはずの同期を甘く誘惑したら



さすがに、この段階で守屋を使って断るっていう俺の必殺技も出せねぇしなぁ。
と仕方なく社食で一緒に食べたら、いろんな男性社員に茶化された。



「おいおいおい。色男、遂に身を固めたか〜?」

「後輩に手出すとはさすが、モテる男は違うね〜」


とか。そういううざいタイプのいじりがほとんど。


「は?そんなんじゃねぇよ。」


俺が否定しても、隣の桜木が否定もせずに嬉しそうにニコニコしてるから説得力は皆無だろう。



その上、一番こんなことを今、聞かれなくない守屋の真隣で


「浅香さん、一緒に帰りましょ?♡」


なんて甘えたようにアフターファイブを誘う桜木に、もはやどうしていいのか分からない。

桜木は自分の魅力や魅せ方をとことん理解してやってるんだろうなと思った。

誰かさんに教えてやってくれよ。その図々しさ。と言いたくなる気持ちを抑えて、彼女に苦笑いを返しておいた。


さすがに彼女の誘いに、「無理」と冷たく言い放つことも、他の言い訳をぱっと考えて言うこともできなかった俺は

「おー、今上がり?すげぇタイミング」

と彼女を受け入れるような発言しかできなかった。


「ですね〜♡浅香さんと帰れるなんて嬉しい」



ルンルンで俺の隣を歩いて、「お疲れ様でした〜♡」なんてオフィスをあとにする彼女は説教したくなるほど俺の作戦の邪魔をしているように思える。



< 23 / 112 >

この作品をシェア

pagetop