犬猿だったはずの同期を甘く誘惑したら
するとふと、ぼんやりする視界の端で青木の姿を見つけた。
コレだ。と思った俺はすかさず牽制するように言葉を発した。
「武部さんは青木が待ってんだろ?俺が家知ってるし近いから。」
そんな俺に何も言えなくなった2人の隙を見て、俺はひょいと守屋を抱えた。
軽っ。お前、ちゃんと食ってんのかよ...
と思っていると守屋が、んーと言いながら俺の首に腕を巻き付けて、頬をすりすりと俺の首筋に擦り寄せてきた。
あー。なんでこんな状況でもお前はそんなに可愛んだよ...。
気持ちよさそうに眠る守屋にキスしたくなる衝動をぐっと我慢して、三宅の方を向いた。
「それと。こいつ、見た目よりそんな酒強くねぇからもうあんま飲ませんなよ?
で。 守屋送んの、俺の仕事だから。」
宣戦布告みたいに、三宅にわざと偉そうにそんな言葉を言い放ち、俺はその場を去った。
しばらく歩いてタクシーが捕まりそうな大通りに出る。さすが金曜。タクシーも多い。
「おい、守屋。タクシー乗るぞ」
そう声をかけると、パチッと守屋が目を開けた。
「あれ〜?浅香だぁ!!
ちょっとぉ!自分で歩けるから下ろしてよぉ」
なんて言いながらバタバタと足をバタつかせて暴れ始める。
おい、マジでやめろ。
と思いながらも酔っぱらいの力と言うのは凄い。
守屋が遠慮なく暴れるせいで色んなところを蹴られた挙げ句、大声で喚く彼女に集まった視線に耐えられなくなった俺はとりあえず守屋を下ろすことにした。