犬猿だったはずの同期を甘く誘惑したら



デート当日の朝。


車に乗った俺は柄にもなく緊張していた。
朝が弱いはずなのに、アラームがなる前に起床。


こんなの初めてじゃね?どんだけ俺、デート楽しみにしてんの。


なんて自分が自分じゃねぇみたいでおもしろい。



あと数十分後には助手席に守屋が乗ってる。



アイツ、『とびきり素敵な女の格好』してくれてんのか?

ひねくれ者だから、普通の格好で来そうだな。


『アンタと出かけんのになんで素敵な格好なんてしなきゃいけないのよ!』


とか言われそー。


なんて空想上の守屋にクスッと笑いが込み上げる。



まぁ、どんな守屋でも可愛いからいいか。


そう思いながら守屋のマンションのロータリーに着いた。



『ついたぞ』


とやけにシンプルなメッセージを送ったけど、本当はかなり浮かれてんのを気づかれないため。


守屋が下りてきたらなんて言葉をかけようか。そんなことを考えてるうちに、コツコツとヒールの音が聞こえた。



白のプルオーバーに淡いイエローのテーパードパンツ。ゴールドのフープ型のピアスを付けて、ベージュのチェスターコートを羽織った守屋はまるで出勤するみたいな服装だった。



いや〜。さすがひねくれ者だな。


いつも通りって。そりゃねぇよ。


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