犬猿だったはずの同期を甘く誘惑したら
でも、守屋は俺のそんな気持ちはトコトン無視。
「どーぞ」と助手席を開けても、
「どーも。」とやっぱり軽蔑の目で見られる。
女慣れしてると思われてんだろうな。
じゃあ、逆効果じゃん。おい、ネット...。
最初のエスコート作戦は失敗に終わったけど、とりあえずこんなことでメゲていてはなにも始まらない。
俺と守屋の4年間築き上げてきた、犬猿の同期という関係性を壊すには並大抵の努力じゃダメだ。
と、自分をとりあえず励ました。
「守屋、朝メシ食った?」
「食べた。」
「寒くねぇ?」
「大丈夫」
俺の会話にもポツンポツンと単発な返事しかくれない守屋に今にも心が折れそうになりながらも、
とりあえず守屋が前に好きだと言っていた洋楽を流してみた。
「あ、これ!」
音楽がかかった途端、声を上げた守屋が鼻歌を歌い始めて、少し上機嫌になったようだった。
「覚えてたの?私が好きだってこと。」
赤信号で止まった時、俺の方にとびきりの笑顔を向けてそう言って笑う守屋が可愛すぎて堪らない。
待って。マジで可愛すぎんだけど。
守屋が、俺の車の助手席に乗ってる事実を改めて実感して、さらに笑顔の守屋が可愛すぎてなんとなく余韻に浸っていると、
「浅香?青だよ?」
なんて守屋から指摘を受けた。