バックシャンとよばないで

淑女気分(しつこいようだがあくまで気分だ)の帰り道はいつもよりゆっくり丁寧に、背筋も伸ばして指先まで神経を行き渡らせて……
と、優雅(なつもり以下略)に歩いていた

そこに勧誘でない声をいきなりかけられて、内心『淑女最高!』なんて聞きようによっては若干アヤシイ叫びをあげていたのは否めない

今までナンパされたことがないわけではないが、とある事情から愛されたい熱がくすぶっていた彼女にしてみれば、

『これか!この優雅さがわたしに足りなかったのか!!』

と、研修を企画し参加させてくれた会社に五体投地[ごたいとうち]で感謝したいくらいだった

講座内容を頭の中で最速リプレイし、完璧に再現できた、と思う

だが振り返った途端、相手は回れ右!と、誰かに号令でも掛けられたかのようにして謝り
ながら去って行った



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