バックシャンとよばないで

子どもの頃から男の子に間違われやすく、髪を伸ばすことにした

中学の時、友人と話していたら声を掛けられ、振り向くと「なんだよ」と言われた
『なんだよとはなんだよ!』と思いつつ、声をかけた制服姿の見知らぬ男子学生を見つめていると、チッと舌打ちをして通り過ぎていった

ほんっとに意味不明だった

二十歳になってから街中で肩を叩かれた時も同様である

青山の駅では珍しく正面から来たなと思ったら、カットモデルのお願いだった

お店の宣伝用とか、ましてやモデルのスカウトというものではない、単なる見習い君の練習用だった

断ろうとしたが、話をよくよく聞いてみるとこの後テストがあるのにモデルを断られ続け、もう時間が無いと泣きそうな顔で訴えられ、つい引き受けてしまったら全く似合わないクレオパトラのような髪型で途方に暮れた

さすがに試験官役のチーフみたいな人が

「バカヤロー!この娘には似合わねえだろっ!!」

って私に合うスタイルに直してくれて助かったけど

今思えば、あの髪型はホントに整ったお顔の大人の女性じゃないと似合わないと思う


つまり後姿から想像した造形と前から見た実物のギャップに勝手に騙されたと思われる程度の容姿なのだろう

たとえ愛される女性がするような淑女の仕草でも埋められないほどのーーー




< 6 / 8 >

この作品をシェア

pagetop